徒然草(於 ジュネーブ)

2022年3月から仕事でジュネーブに赴任しました(2回目)。日々の生活やスイス、ヨーロッパの風物など徒然なるままに…

アート・ブリュット美術館(2022年3月27日)

2022年3月27日は、かねてより訪問したかったアート・ブリュット美術館(Collection de l'Art Brut Lausanne)へ。美術館のあるローザンヌには、電車の乗り合わせにもよりますがだいたい40〜50分ほど。ローザンヌジュネーブ以上に坂の街でした。

この美術館のテーマとなっているアート・ブリュット(Art Brut)とは何か。非常に微妙なので安易に要約することなく、館内に掲示されていたパネルから引用します。

WHAT IS ART BRUT?

Art Brut is made by self-taught people who often live on the margine of society, either as rebellious souls or as being that are impervious to normative and collective values. Among them are prisoners, residents from psychiatic hospitals, eccentrics, loners and outcast whose creative expression exists for itself, without any concern for public criticism or what other people might think. They invent their own creative space, seeking neither recognition nor approval. Totally original in their chosen means and materials, utterly singular in their creative processes, they produce works that are untainted by artistic tradition, Thus as a notion Art Brut rests on social characteristics and aesthetic features. 

We ow the original term of "Art Brut" to the French painter Jean Dubuffet (1901-1985). We owe him the museum as well, which opened in 1976 after Debuffet donated his collection to the City of Lausanne. All exhibited works from the permanent collection stemming from Debuffet's donation are indicated by a stamp he devised at the time. 

 

なお、2021年12月17日から2022年5月1日までは、第5回アート・ブリュット・ビエンナーレが開催されていて、展示スペースの半分弱がその展示に充てられていましたが、常設展示との作品の上での境界はあまり意識することはありませんでした(新しいとか古いとか、そういう物差しが当てはまらない)。

どの作家の作品も唯一無二の迫力で、上記の解説にもあるように、どう評価されるとかではなく自身の内にあるものがそのまま形になっている、あるいは内面が剥き出しになっているようで、気圧されっぱなしの鑑賞となりました。


わたしが特に印象深く長く足を止めたのはLaure Pigeonという女性作家の作品。紙にブルーブラックのペンだけで丹念に線を重ねて、不思議な形が生みだされています。見たことがあるようできっとない。植物のようでもあるが動物にも見える。今にも動き出しそうでもあり、動いていたものが凍結したようでもある。

Laure Pegionの作品。ポスターサイズにも関わらず線の密度が濃い

上の作品を一部拡大。線の密度の濃淡と、線自体の濃淡の変化と。


そしてわたしにとって意外だったのは、4人もの日本人の作家の作品が展示されていたこと。Takashi Shuji、Toyo Hagino、Sadanobu Futai、Yumiko Kawaiの作品を見ることができました。Takashi Shujiの作品は黒と褐色と青だけで、鳥や静物を描いているように見えるのですが青が妙に鮮やかで、作品の前に立つとその鮮やかさが逆に不穏な気持ちを呼び起こすようでした。

Takashi Shujiの作品。恐い青だと感じました。

黒い壁、スポットライトのような照明、そこに浮かび上がる作品。ずっと気圧され息を詰めたような鑑賞が続いたため、外に出て春の日差しを浴びた時はほっとしました。美術館の隣にはカフェレストランがあって小さな子供たちの声が響いていました。美術館の中と対角にある情景です。

サンドイッチを頼んだら、良い意味で期待を裏切るご馳走が。

ジュネーブとは逆方向ではあるけれど、帰りにRivazに寄り道をして、広い風景を眺めて気持ちをリセット。

Rivaz駅にて。ここは本当に眺めがすばらしい。